12月1日号

カメラから学ぶ道具哲学・・こだわりのCarl ZEISS T*レンズ

 街角にあるカメラ量販店では夕方になると勤め帰りのOLやサラリーマンでにぎわっている。そんなカメラ業界では最近流行のデジタルカメラをはじめ、オートフォーカスなどの「機能」が話題になっている。しかし、「機能」とは少し違った視点でカメラという道具を覗くと、この道具の基本はレンズであることに気付く。そしてドイツのこだわりレンズCarl Zeiss(カール・ツアイス)の存在にたどり着いた。今回はオーディオ研究家・由井啓之氏のレポートを主に紹介しながらこだわりレンズを紹介する。由井氏は最後に「カメラで言えることはオーディオにも言えます。相互に読み替えて研究しています」と言う。
1、「ツアイスレンズ」
 ツアイスレンズ使用のContax Tを愛用しています。きれいに写るから。 普通のフィルムでサービス版プリントでもすぐ分るので、どんなカメラで写したか?とカメラに興味なさそうな人からも必ず問われます。 他のカメラと同じ条件で撮り比べるとすぐ分りますし、フォトCDにして比較すると圧倒的な差です。Contax Tがこれほどきれいなら、同じコンタックスの高価な一眼レフならもっときれいではないかと、思いきって購入しました。他機種と比べると良いのですが、Contax Tと比べると劣ります。ズームレンズは単焦点レンズにかなわない理屈ですから、50mm単焦点レンズも買ってみましたがやはり差があります。いくら良くても一度最高のものを味わうとそれ以下では満足できません。
2、写真はレンズ
 ピントや露出がピタっと合っても、自動でいろいろなことが出来ても、美しさを決めるのはレンズです。Contax T はこんなカメラがと言うような小さなカメラですが、レンズが最高なんです。
3、レトロフォーカス
一眼レフではミラーがあるためレンズの場所が制限されます。このため55mmより短い焦点距離のレンズが使えない時代がありました。今では設計技術が進んでどんなレンズも作られていますが、制限があれば最高の 設計は出来ないでしょう。いくら巧妙に設計してもハンディ無しには勝てません。
参考)Contax G-1 のビオゴンレンズは、フィルム面のすぐ前までレンズが来ています。
4、コントラスト
 光がフィルム面に届くまでに何枚ものレンズ面で反射し散乱します。これがフィルム面一面に降り注ぎコントラストを低下させます。細かい色調や正しい色が出なくなります。反射や散乱がなければ逆光で撮っても平気です。太陽を撮っても太陽の光は フィルムの一点にしか行きませんから、他はきれいに写るはずです。一般に日本のレンズは解像度は良いがコントラストが悪いと言われています。日本のレンズは、切れ込みの良さの目安になるピッチ10での画面中心のコントラスト減少率で80%以上のものは一つもなく、70%以上が全体の3割ほどで、大部分は60%台です。(これに対してコンタックスのプラナーは81%、ライカは84%。そのかわり解像度はやや低い) 散乱分は2倍以上ということになります。強い光が微妙な部分に散乱することを考えると影響はとても2倍程度の感じではありません。
5、T*コーティング
 レンズが空気と接する面の反射散乱を低減するためコーティングをします。カールツアイスのコーティン技術は抜群で他社の及 ばないところでしょう。赤いT*のマークはこのコーティングを示します。<レンズの枚数> レンズ枚数が多いと反射散乱が多くなります。Contax Tの Sonnar 2.8/38 T* の枚数は3枚です。10枚以上のレトロフォーカスレ ンズでは、その鮮度においてとてもかないません。「シンプル イズ ベスト」です。
6、テッサー
 テッサーは1902年ツアイス社のルドルフが完成し、抜群の性能は一世を風 靡しました。特許が切れた後は世界中のメーカーがテッサータイプを製造したといわれています。有人宇宙船から初めて地球を撮ったレンズもテッサーです。一眼レフではミラーがあるので使えなくなりガウスタイプが主流になってしまいましたが、性能は当然テッサーには及びません。レンズは3枚です。高級バカチョンカメラ<Kyocera Tproof>はCarl Zeiss T* Tessar 3.5/35 がついています。テッサー(しかもT*)のついている、唯一の現製品カメラではないかと思います 。

<テッサータイプ>
乱反射の起こる空気との境面は6面Rollei 35 T Kyocera Tproof contax T のゾナーもほぼこれと同じ。conntax tesserT*45mmF2.8
<ガウスタイプ>
  乱反射の起こる空気との境面は12面、1眼レフの50mm標準レンズ
<ズ ーム レ ンズ>
乱反射の起こる空気との境面は26面1眼レフズームレンズの1例散乱は、テッサーの前に素通しの保護用フィルターを10枚重ねたのと同じ。高価なレンズ複雑だから高価。きれいに写るから、高性能だから高価なのではありません。

7、シンプル・イズ・ベスト
 あれだけの枚数を仕上げて位置を正しく組み立てても、三枚以上の性能は出ない。あれだけ複雑なもので、よく性能が出せるものだと感心します。シンプル・イズ・ベストですカメラで言えることはオーディオにも言えます。相互に読み替えて研究しています。


関連書籍
小林孝久「ツアイスレンズーその魅力と歴史」 朝日ソノラマ 7905初版
小林孝久「カール・ツアイス 創業・分断・統合の歴史」 朝日新聞社9110初版
小倉敏布 「写真レンズの基礎と発展」 朝日ソノラマ 9508初版