ー特集ー「メトカーフの法則」に視るネットワーク中心主義

 「ネットワークの価値はユーザー数の増加に対し急激に上昇するが、ネットワークのコストは直線的にしか上昇しない」という法則がある。ネットワーク時代の真の牽引力になるこの法則は「メトカーフの法則」と呼ばれている。これまでの「グロッシュの法則」や「ムーアーの法則」とは根本的に違い、ネットワーク時代に対応する「メトカーフの法則」は、今後の哲学、経営や社会生活を大きく変えることになりそうである。今回はこれまでの時代の法則を振り返りながら、「ネットワーク中心の時代」の法則を検証していく。

1、「グロッシュの法則」・・・システム中心の時代(1960年代から1970年代)
 1940年代に、コンピュータのパイオニアであるハーブ・グロッシュが「コンピュータの性能は価格の二乗に比例する」という理論(グロッシュの法則)を唱えた。これはあるコンピュータが別のコンピュータの倍の価格なら、処理能力は4倍になるという理論で、大型コンピュータや大型システムを買う方が得だという理論である。1960年代から1970年代までほぼその通りに推移したハード優先の時代であった。当時、IBMが大型汎用コンピュータで世界を制覇したシステム中心の時代であった。

2、「ムーアーの法則」・・・ PC中心の時代(1980年代から1994年)

 
グロッシュの法則に対して、インテルの共同創業者ゴードン・ムーア−が唱えたムーアーの法則は、「半導体の性能は2年に倍の割合で向上する」という理論で、マイクロプロセッサを使用した量販システムによってIT業界は独自システムよりもはるかに速い速度で右上がりの成長曲線を描くというものである。その法則通り、1980年代半ばには、すでにグロッシュの法則は通用しなくなり、PCその他のマイクロプロセッサを使用したシステムの価格性能比がベストであることが、誰の目にも明らかになった。 ムーアーの法則の主人公はパソコン(PC)である。マイクロプロセッサのスピードが年々倍々に変化するムーアーの法則どおりに、驚異的な低コストと、めまぐるしい技術革新により、社会全体が恩恵を受けて、世の中が変化していった。大型汎用システムを得意とするIBMに変わりマイクロソフトやインテル、アップルコンピュータなどがパソコンの文化を世界の隅々まで布教した。

3、「メトカーフの法則」・・・ネットワーク中心の時代(1995年〜)
 2年ごとに半導体の性能が倍増すると予測したムーアーの法則は、これまで30年にわたってハードウエアー業界を引っ張ってきた。今後もそれは変わらないかもしれない。しかし、これからのネットワーク時代の真の牽引力になるのは、「メトカーフの法則」である。ネットワークの価値はユーザー数の増加に対し急激に上昇するが、ネットワークのコストは直線的にしか上昇しないという理論である。これからの時代には「メトカーフの法則」でいうネットワークにおける経済性の威力を活用することが、次世代での成功の秘訣になる。

4、ネットワークが必要としているのはパソコンの性能ではなく通信速度である
 ネットワーク時代に重要な点は、ムーアーの法則のような変化のスピードが加速したことではなく、「メトカーフの法則」が適用される時代(1995年〜2005年)においては、一瞬で変化はする。これまでの時代は半導体の性能やマイクロプロセッサのスピードの倍増こそが変化をもたらす重要な要素であったが、これからの時代は通信速度が重要になってくる。

5、「メトカーフの法則」は「生命の法則」
 システム中心の時代(グロッシュの法則)から、パソコン中心の時代(ムーアーの法則)へ、そしてネットワーク中心の時代(メトカーフの法則)へ、パラダイムはシフトしている。今後はネットワーク中心の時代を経て、やがてコンテンツ中心の時代へ移行する。現在はムーアーの法則とメトカーフの法則が融合した時代にあたる。この融合の極致は、世界中の人々がパソコンで結ばれることである。その時、世界はどうなるか?私達の社会や暮らしはどうなるか?この問いにそれぞれの想像力を働かせ各人それぞれの答えを出したい。その時、「メトカーフの法則」によると、ネットワークの価値は想像を絶するものになる。その無限ともいえるネットワークの価値がさらに新たな価値を生む。パソコンとパソコンを結ぶネットワークの中には何が走り回っているのか?「情報」が時間と空間を越え世界中で交換されている。「情報」とは無機的なものに生命を吹き込むもので、生命を得た「もの」が高密度に交換される社会が到来する。人類の歴史は生産性革命の歴史と言っても過言でない。農業革命、産業革命、最近のデジタル情報通信革命、どれをとっても生産性UPの革命である。特に最近のデジタル情報通信革命は「知的生産性」の革命と言っても良い。問題はこのデジタル通信革命もその時期によって様々なパラダイムシフトをしながら進行している。どこからかネットワークこそ生命という声が聞こえてくる。「メトカーフの法則」は「生命の法則」かもしれない。